
はじめに
部下を指導する中で、つい感情的に怒ってしまって後悔したことはありませんか?
教育的な観点からは「怒る」のではなく「叱る」ことが必要です。
強い口調で相手に要求するという点では似ていますが、「怒る」はマイナス要素を生み出すだけです。
「叱る」は場合によっては必要な行為であり、部下の可能性を広げて将来の成長を促します。
この「怒る」と「叱る」の違いを理解して、部下に信頼される上手な叱り方を身につけていきましょう。
■「怒る」とは
相手が自分の思い通りにならなかったとき、腹をたてて自分の感情を相手にぶつける自分本位の行為です。
怒りや不満を相手に理解してもらうため、感情の赴くままに表現する自己中心的な行動です。
相手には悪い影響しかありません。
■「叱る」とは
相手の間違いや良くない所を指摘するために、あえて声を大きくしたり語気を強めて相手に伝える行為です。
教育指導的な意味合いがあって、同じ間違いをしないため、成長を願った行動です。
相手のことを日常的によく観察していないと叱ることはできないので、相手との信頼関係が構築されるメリットがあります。
■コミュニケーションにおける「怒る」と「叱る」の違い
相手の反省や改善すべき点を明確にして、次に行うべき改善行動に導いているかどうかが、両者の大きな違いです。
つまり、相手の成長を促す要素が入っているか否かということが重要になります。
「怒る」感情的に良くない所を指摘したり、人格を否定するような言動は、相手を委縮させるだけです。
「叱る」ときは、良くないところを丁寧に指摘して成長してもらいたいと思って伝えます。
「何が悪かったのか」「次回はどうするべきか」を考えるチャンスを与えることが重要です。
■職場でやってはいけない????り方
(1)人前で叱る
緊急を要する場合を除いて、叱る際は1対1で伝えるようにしましょう。
人前で叱ってしまうと、叱られている人は「恥をかかされた」と感じてしまい自尊心を傷つけます。
他人の目が気になって指導内容が頭に入りません。
(2)人格否定
「お前はダメだ」「お前は頭が悪い」など人間性の否定は、絶対にやってはいけない行為です。
ただの悪口で、相手にとってポジティブなものは何も生まれません。
(3)上下関係を見せつける
パワハラが生じる状況になってしまうので、上下関係を見せつけるのはNGです。
上司だから偉くて傲慢な態度をとって良いわけではありません。
あくまでも部下を教育する責任がある、というスタンスで叱ることが大切です。
(4)他人と比較する
他人と比べることは極力避けるべきです。
違う人間であるのですから、能力も違うのは当たり前のことです。
あくまでも対象となる相手の成長に焦点を当てて叱ることが大切です。
■部下が素直に受け止められる????り方のコツ
(1)その場で叱る
よほどの事情が無い限り、すぐに叱るようにしてください。
後々になればなるほど、なぜ今更に言われるのか、と反感をもたれてしまいます。
(2)叱る内容は一つに絞る
二つ、三つと叱ることが増えると、何に対して指導されているのか混乱してしまいます。
色々なことを言いたくなってしまう気持ちをぐっと抑えて、叱る内容を明確にすることが大切です。
(3)短く叱る
要点をしっかり伝えて、端的に叱ることがポイントです。
長い時間をかけるよりも、伝えたいことを明確にして一言や二言にまとめて叱るのが良いです。
(4)5つのステップを意識する
1.日頃の感謝を伝えつつ、事実のみを伝える
2.「成長してほしい」という叱り手の気持ちを伝える
3.相手の気持ちや考えを確認する
4.フォローをする。
5.次回への期待を伝える
おわりに
「怒る」と「叱る」の違いは理解できましたでしょうか。
人間ですから、どうしても感情的になってしまう瞬間はあると思います。
そのときはぐっと堪えて、今から発する言葉が相手の成長につながっているかどうかを自問してください。
正しく上手に叱って、部下との信頼をより強固なものにすることができると、仕事のパフォーマンスは劇的に向上します。